先日納めたダイニングテーブル。
小さな娘さんがいらっしゃるお宅なので、なるべく出っぱりをなくしたいとのことでした。
何度か打合せを重ねて、とてもシンプルでフラットな印象に仕上がりました。
部材と部材が少しずれている箇所の寸法のことを『チリ』というのですが。
出っぱりをなくしたいとのことで、チリをとらずに、天板から足、幕板にかけてのラインをフラットに仕上げました。
季節によっては天板が収縮したり膨張したりして、少し隙間が出来たりする可能性があることもお客様に伝えたのですが、季節で多少変わっても、その変化を楽しんでくださるとのこと。
そう言っていただけて、なんだかとても嬉しかった。
豊かだなあ、としみじみ思ってしまいました。
豊かさ、って何なのでしょうか。
いつからか私たちは、製品やサービスについて、完璧であることを求めるようになった気がしてなりません。
間違いや誤差は、もちろん製造業ですから、いけないことです。
ただ、木が動くのは、無垢の家具の特徴のひとつです。間違いではないのです。
それが棚の扉だったりすると開け閉めに少し抵抗があったりして不便を感じることもあるかもしれません。
しかしきちんと作ったものであれば、季節が過ぎれば、また元に戻ります。
あくまでも、我々作り手が持てる最大限の技術を使って、緻密で、正確な仕事をするのは大前提とした上で、の話です。作り手が手を抜いていいという話ではなく。
その不便に季節を感じることができるって、とても豊かなことなのではないか、とふと思ってしまいました。
木工作業は全くできない、ただの家具屋の店番のつぶやきと、聞き流してください。
この日は娘さんの1歳の誕生日!
早速つかまり立ち&全力のつま先立ち!
この子の成長とともにこのテーブルも使い込まれて行くかと思うと、
とても幸せな仕事だなあと思いました。